Summer Semester


(画像左:今頃になって雪。右:Paulo Mendes da Rocha氏の講演会。)
いよいよSummer Semesterが始まりました。と同時になぜか急に寒くなって雪が降ってきた。1月の終わり頃に少し降って2月も3月もぜんぜん降ってなかったんですが、今になってまた雪とは。まあ、少しくらい雪降ってないと春が訪れる喜びも小さくなりそうな気がする。
大学内は一気に学生が増えて活気が出てきました。早速、昨年プリツカー賞を受賞したブラジル生まれの建築家Paulo Mendes da Rocha氏の講演会。 恥ずかしながらぜんぜん彼の事を知らなかったのですが、重量感のあるコンクリートのオブジェクトを空中に浮かせるような彼の手法はとても力強く感じられ、プログラムうんぬんかんぬんよりも空間としての魅力を感じられそうな作品たちです。近いうちに南米に行きたくなった。

(画像左:Associative Designのレクチャー。右:デザインスタジオのオープニング。)
デザインスタジオのほうもスタート。今学期はエチオピアでの都市リサーチとアーバンデザインのプロポーザルになる。ワークショップで準備した自分たちのプログラムをプレゼンして、早速ディスカッション。エチオピアにいく前にどこまでリアリティを持って、有効なプロトタイプを考えられるかが焦点になりそうだ。
現在は参考になる情報を集めているところ。少し前にOMAのLAGOSのドキュメントムービーを見た。大きく2つのパートからなっていて、1つめは建築家やアーバンデザイナーからの視点で映像や映し出され、2つめは市民へのインタビューとともに市民の視点で映像が映し出されている。同じ状況を違う視点から見ることによって、都市に起こっている状況は多様な要素が複雑に絡み合ってできていることがわかる。都市デザインを考える上では、両者の視点から状況を把握することが重要だと感じた。
さらには昨年Berlage Instituteで学んでいたRolf Jenni氏(タケルさんの元同僚)らによるAssociative Designのレクチャー。彼らはパラメーターを使ったAssociative Softwareを利用して、形態を少しずつ変化させながらその形態変化がどんな要素に作用しているのかを理解しながら、場所や条件に一致するポイントを決定する方法でデザインしていた。もちろんパラメーターの選び方や形態自体には恣意性はあるのだけど、条件が変化する度に容易に形態を変化させてみる事ができるような、デザインのためのコミュニケーションツールとしてはとても有効だと感じた。ツールとなるソフトウェアも重要なのだけれど、むしろデザインの提案に幅をもたせるという考え方のキーポイントは、ディベロッパーや他のデザイナーとコラボレーションする際にとても有効な姿勢ではないかと思う。
今学期はいよいよ本格的にアーバンデザインの領域に取り組むことになる。どんな方法論がどんな場面に有効なのか、見極められるチャンスなりそうだ。

Workshop: プロセスの可視化


Workshopが始まってから約2週間。当初はアーバンデザインのToolboxをつくるということだったが、結局明確なお題はなく、次のセメスターでのエチオピアの調査につながるツールをデザインするということになった。それで議論の結果、自分たちの次のセメスターのプログラム自体をプロセスを含めてデザインすることに決定。デザインメソッドやエチオピアに関する資料を集めてPoolと名付けられた壁(画像右側)に集め、Time Table、Team Organization、Topicsの3つのテーマに分けられた自分たちのFilterを通して、有効な情報としてToolの壁(画像左側)に集めて、最終的にはToolの壁に自分たちのプログラムが出来上がるという環境とプログラムのデザイン。

そして完成。これまでの過去(現在は2週間)のプロセスは記録として残され、これからのプロセスはこの壁自体がアクティブなディスカッションのツールとして機能する。常にセメスター全体を意識しながら、目標を設定、チームの組み替え、インプットとアウトプットを可視化していく。今回のように簡単に調査のサイトに行けない場合には、その期間前と後で何ができるかを意識しておく必要があって、変化が起こった時に目標も再設定する必要がある。そんな時に情報を共有し、常に全体と最終的な成果を意識できる環境のデザインが必要だったわけだ。
これがきっかけになって、セメスターのプログラムデザインを本格的にすることになった。どんな最終的な成果を目標にして、どんな情報が必要になるから、例えば誰にレクチャーを頼むべきか。こんなことをするとは思ってもなかったが、自分たちが次のセメスターから得られる経験をデザインできるとすれば、とてもエキサイティングな機会になるはずだ。

AA Workshop


AASchoolのワークショップのプレゼンテーションへ。とはいってもスタジオと同じ建物内。どうやらProf.Angelilの研究室と恊働でやっているらしい。来ていたのはDiploma Unit 14。地域レベルのDesign strategyのコースで、メディアデザイナーのTheo Lorenz氏がチューターをつとめている。ワークショップのテーマは” Communicating Strategies”。
彼らのプレゼンテーションはとてもシンプルなコミュニケーションツールのデザイン。ある地域でデザインをする時、デザインを市民に広く見て知ってもらうために展示をするのはよくあることだと思う。そんな時、いかに市民にデザインの意図を知ってもらって、しかもいかに市民の興味を導きだすか。彼らが提案しているのは、そんなデザイナーと市民のコミュニケーションの媒体となるツール。
まず入場者はカードケースを受け取る。そこには様々なカードが入っていて、それはデザイナーの視点で選ばれた地域の魅力的な部分を示している。市民が興味があるところの装置にカードを入れると、プログラムされた映像が流れる。そしてカードには穴があけられ、再びカードケースに収めるとその穴を通してデザイナーの提案が見えるようになる。文字で表現するのは難しいが、そんな感じ。装置にこめられたデザイナーの働きかけが、市民の興味のアクションに反応するわけだ。ただアクションが起こる展示はよくあるが、デジタルとアナログのツールを組み合わせて、何度もアクションが重なるようになっているとすれば、それはコミュニケーションに近いのではないだろうか。
彼らの提案はシンプルで、可能性を感じさせてくれるものだった。さて、こちらのワークショップはいかに。

Weil am Rhein: すぐ隣のドイツ


ヴィトラに行こうと決めてたものの、日曜日はバスがめちゃくちゃ少ない。なんとか乗り継ぎ&徒歩で到着。さっそくdesign museumへ。本当は一つ前のJean ProuveのExhibitionに来たかったのだけれど、 一足遅く、”The Destruction of Gemütlichkeit? Programmatic Exhibitions on Domestic Living in the 20th Century ”になってました。当時のポスターやCMなども展示してあったけど、家具のデザインは今でも色褪せないのに周りの人たちは随分古く思える。流行は時間に流されるけど、それとは違う絶対的な美的感覚っていうのもあるのかもしれない。ゲーリーの内部空間も空間の絡み合いがすばらしい。

14時からの見学ツアーに参加。Jean Prouve のプレファブとAlvaro SizaとNicholas Grimshawの工場。Sizaの作品は初体験だったがとてもシンプルで質がいい。内部も見てみたい。二つの工場をつないでいる橋みたいな屋根。雨が降ると下りてくるらしいが、どうやらそんなに雨を防ぐ効果はそれほどないらしい。むしろゲート的な効果。

Zaha Hadidの元消防センター。現在はVitraの100点の椅子が展示されている。雑誌とかで見てるよりも実際に並べて見るとデザイナーの個性や考え方がわかる。建物の中も魅力的で、この直線的な手法がパースペクティブに感じさせる効果をもっている。コンクリートとガラスの組み合わせ方もおもしろい。

安藤忠雄氏のセミナーハウス。外から見てるとすごくシンプルに見えるが、内部に入ると地下に空間が広がっている。他の作品がオブジェクトのようなデザインに見えるのに対して、この建築はアプローチから内部に入って、外部空間とも組み合わされ、すごく心地のいい空間に仕上がっている。やはり日本人のセンスはこちらには無いものを持っていることを感じる事ができたので、すごく良く見えた。
ドイツに入った瞬間に道路や交通機関などの整備がずいぶん違って見える。スイスはしっかりしてるような気がする。ドイツに入った瞬間に家の雰囲気も変わる。バーゼルあたりの人たちは、スイス、ドイツ、フランスをうまく使い分けているんだとか。仕事はスイス、買い物はドイツかフランス、とかね。日本ではなかった感覚ですね。
memo
“Vitra Design Museum”
Architect: Frank O. Gehry, 1988-1989
Address: Charles-Eames-Strasse 1, D-79576 Weil am Rhein
“Gas Station”
Architect: Jean Prouve, 1950s
Address: Charles-Eames-Strasse 1, D-79576 Weil am Rhein
“Vitra Furniture Factory”
Architect: Nicholas Grimshaw, 1981
Address: Charles-Eames-Strasse 1, D-79576 Weil am Rhein
“Fabrikationshalle Vitrashop”
Architect: Alvaro Siza, 1992-1993
Address: Charles-Eames-Strasse 1, D-79576 Weil am Rhein
“Feuerwehrhaus”
Architect: Zaha Hadid, 1991-1993
Address: Charles-Eames-Strasse 1, D-79576 Weil am Rhein
“Vitra-Konferenzzentrum”
Architect: Tadao Ando. 1992-1993
Address: Charles-Eames-Strasse 1, D-79576 Weil am Rhein

Basel: 建築家のサラダボウル


Zürichから1時間程度なのになぜか通過するばかりだったBaselへ。まずはMuseum Tinguelyへ。レンガのテクスチャやスケール感はBottaらしい気がするが、内部はとてもシンプル。そして実はTinguelyの作品に童心をくすぐられ、建築どころじゃなかった。機械的な仕組みと奇妙な動作を取り入れる彼らのアート作品はまさにエンターテイメント性をもったアート。彼らのアートは人々の常識の感性にユーモアを与えてくれる気がした。

続いてFondation Beyelerへ。いつもいい評判ばかり聞いていただけあって、とても洗練された美術館。壁とガラスの組み合わせがなんとも美しい。そしてまたもやEROSの展示に惹かれてしまう。もっと欲望としてのエロスだと思ってたら、本当にストレートな裸体みたいな作品もあった。自分としては身体の曲線であったり、身体の一部を画として切り取ることによって見る人に想像させる表現にエロスとしての共感を覚えた。その結果、実は地下があることを知らず満足して帰ってきてしまった。次回は必ず。

こちらはHerzog&de MeuronによるREHABという療養施設。どこか日本らしさを感じさせるのは気のせいか。これまでの彼らの作品にはない質をもっている。プライベートクリニックのため内部へ入ることはできなかった(実はできたけど自分が怪しく見られた)、印象的なルーバーのような表面のつくり方は、間伐材のような細い木材を組み合わせ、アクリルのような透明のジョイントで連結している。内部には様々なキャラクターをもつ半外部空間が配置されていて、そのあたりに彼ららしさを見ることができる。

REHABの近くにあるスポーツ施設。表層によってMassの表現を際立たせている。遠くからはわかりにくいが、近づいてみると開口部分の表面にはプリントがない。ガラス=窓みたいな考え方ではなく、ガラスをひとつの素材として捉えた時に発想できるアイデアだろう。なるほど。やっぱり実際に見ると良さがわかってくるものだ。

Novartis campusへ。まだ工事中のためは入れなかったが、Diener Diener, SANAA, Peter Märkliのプロジェクトを外から眺める。D Dのカラフルさがとても際立っているが、なかなか気持ち良さそう。外壁の細部のつくり方も奇麗だと思う。それに比べてSANAAのシンプルさ。中に入って比べてみたい。Märkliの作品はほどんど見れなかったが、ファサードに映している文字がかなりデカイ。エントランスから見てちょうどくらいだから、近くに行くともはや照明だったりして。

H&deMの”Institut für Spitalpharmazie”へ。これも表面のガラスに緑色のドットを貼っていて、遠くから見ると緑色の大理石か何かに見える。日本にいた時は、「表面ばかり操作しても内部とは関係ないんでしょ?」とか考えてみたものの、これといい、スポーツ施設といい、来てみると内部との関連も見られたし、ガラスという材料のおもしろさもわかったし、これがスイスかと納得させられようとしている。。。
Baselでは建築ガイドがCHF2で買えるのだが、街を歩けば建築家に当たるくらい、多くの有名なの建築家の名前が見られる。たった人口16万人程度の小さな都市で、こんなに建築家が集められる都市なんて奇跡的。まるで建築家のサラダボウル。かといって表参道みたいにコレクションみたいな感じはしなかった。ブランド性とは少し違うのかも。建築マップが観光マップになってるのがまた日本とは違うところ。日本で建築マップで観光しろっていわれても、きっと全部一緒に見えて飽きられるんでしょう。
夜はバーゼルで働かれているキムラさん、ヒメノさん、ユーイチさんとキムラさん宅でおいしい夕食をいただきながらスイスの事務所について教えてもらう。うーん、現実ってのは厳しい。これはちょっと作戦が必要だ。もちろん、実力をつけることが何よりも重要である事は変わらないのだが、25歳になって時間にも敏感にならなければいけないことに気がついた。ホントにありがとうございました。
memo
“Museum Tinguely”
Architect: Mario Botta, 1994-1996
Address: Paul Sacher-Anlage 1, Basel
Bus 31/36 to Tinguely Museum
“Fondation Beyeler”
Architect: Renzo Piano, 1993-1997
Address: Baselstrasse 101, Basel
Tram 6 to Fondation Beyeler
“REHAB Basel”
Architect: Herzog & de Meuron, 1999-2002
Address: Im Burgfelderhof 40, Basel
“Sportanlage Pfaffenhorz”
Architect: Herzog & de Meuron, 1992-1993
Address: 5, rue de Saint-Exupéry, F-68300 Saint-Lpuis, Basel
Bus 601/602 to Hurst
“Novartis campus Forum 3″
Architect: Diener Diener, 2005
Address: Fablikstrasse, Basel
“Novartis campus WSJ-158, Bürogebäude”
Architect: SANAA, 2005-2006
Address: Fablikstrasse 4, Basel
“Novartis campus WSJ-157, Bürogebäude und Besucherzentrum”
Architect: Peter Märkli, 2004-2006
Address: Fablikstrasse 6, Basel
“Institut für Spitalpharmazie”
Architect: Herzog & de Meuron, 1997-1998
Address: Spitalstrasse 26, Basel

La chaux-de-fonds: コルビュジエの原風景


スタジオのFeiが昨年Landscapeのマスターでやったプロジェクトの展示がはじまるということで、La chaux-de-fondsへ。ラ・ショー・ド・フォンといえば、ル・コルビュジエ生誕の地として有名な街。10年ほど前にはじめて聞いた時は結構な田舎を想像していたものですが、来てみるとなかなか立派な街。17世紀末に大火事で焼けたため、街の中心部はグリッドで構成されていて、住居敷地の南側には必ず庭を持っているという、ちょっと奇妙な構成もおもしろい。Feiがやったランドスケープの敷地を見せてくれるということになり、隣のLe Locleという街まで行ってから、歩いて敷地をまわる。約4時間。やはり建築の敷地とは違って、広範囲だし、丘や森もあるわけで、予想していたよりハード。。。でもFeiが丁寧に説明してくれたおかげで、ランドスケープの読み方やデザインの方法論など勉強させてもらった。

La chaux de fondsに戻り、早速Le Corbusierの初期作品を見にまずはVilla Jeanneret-Perretへ。彼が一人で設計した最初の作品と説明してもらう。サヴォア邸などと比べると表現は明快ではなく、特徴を読み取るのが難しかったが、開放して使える折りたたみの間仕切りは空間の自由さを表現していたように感じられた。それにしても花の壁紙と庭の壁面の青色は本当にオリジナルだったんだろうか?ちょっと奇妙に見えたが。近所の木造建築作品を3つほど見て、Villa Schwob(Villa turque)へ。彼のここでの最後の作品。内部は入れなかったが(予約すれば入れるらしい)、彼の変化の過程を見られたことは収穫だった。

最後に目的だった展示のオープニングに参加。敷地を見て来たおかげで彼らの手法をよく理解できた。展示は小さいけど、完成度は高い。彼らが敷地のリサーチとして作ったビデオ作品も魅力的だった。個人的には、Goundscape展みたいな力強い模型があったらもっとよかったと思う。とても収穫の多い一日でした。
memo
“Villa Jeanneret-Perret”
Architect: Le Corbusier, 1912
Address: chemin de Pouillerel 12, La chaux-de-fonds
“Villa Schwob”
Architect: Le Corbusier, 1917
Address: rue du Doubs 167, La chaux-de-fonds

Mendrisio, Lugano: やっぱりボッタ?


BellinzonaからMendrisioへ。The Academy of Architecture, The University of Luganoで勉強しているイトーくんとコムさんが知り合いで、便乗させてもらう。ここMendrisioはMario Bottaが生まれたところで、AcademyではBottaをはじめ、Peter Zumthor, Valentin Bearth, Valerio Olgiati, Aires Mateusといった、有名どころの建築家が教えている。建築ではETHZ, EPFLと並んで人気がある。この錚々たるスタッフや環境を整えるためにBottaが尽力されたそうで、ここではもはや神となっています。それぞれの建築家がスタジオをもっていて、個性が出ている。写真右はAires Mateusのスタジオ。図面は白黒を基調にしていて、断面図が重視されている気がする。MassにVoidを空けるスタイルをもつ彼のスタイルだけに、断面図にこだわることで壁の厚みや内部と外部の関係性についてもっと勉強できそう。

こちらはZumthorスタジオの模型。都市計画のプロジェクトの模型なのに、木材とかコンクリート(ジェッソ?)とかの素材を荒々しく使っている。ここまでくると素材とスキームが対応しているとかはそれほど重要ではなく、模型自体のアート性を追求しているようにも考えられる。確かに、模型が力強く見える。素材とスキームの関係を聞かずにこれを一概に良いと評価するわけにはいかないが、こういった感性の表現がちゃんと実際の仕事場でも活きているというところが、日本では考えにくいところのような気がする。システムやプログラムだけじゃなく美しさも建築家には必要だということか。断面図の図面にも模型貼付けてたのには驚いた。

Zürichへの帰り道にLuganoへ。Mario Bottaの Bus Terminal(写真左)を見学。交差点を挟んでAdministrative buildingとRansila II(写真右)を見てみると、同じ事務所が設計したとは思えないほどまるで共通点が見られない。Bottaも違うスタイルを取り入れようとしているのか、組織事務所化しているからか、はたまた目を引く建物が必要だったからか。。。わかりません。古い作品はやはり彫刻のような芸術性を感じさせる完成度の高い作品。なのになぜ?
Mendrisioではイトーくん、イケミヤーギさん、カネセくんと建築話で盛り上がる。Ticino建築にずいぶん興味をもちました。やっぱボッタかもな。お世話になりました。
memo
“Canopy of the TPL”
Architect: Mario Botta, 2001 – 2002
Address: Lugano, Ticino
“Edificio amministrativo”
Architect: Mario Botta, 1981 – 1985
Address: Lugano, Ticino
“Edificio amministrativo Ransila II”
Architect: Mario Botta, 1985 – 1991
Address: Lugano, Ticino

Giornico, Bellinzona: ミニマルであること


Zürichから鉄道で2時間ほど行き、Faidoでバスに乗り換え、Giornico S. Antonio下車。ETHZürichの教授であるPeter Märkliの代表作、La Congiuntaへ。鍵はバス停近くのカフェで借りる(またもやこの手か)。今回は先に到着したコムさん一行が借りてくれてたので、早速美術館へ。この美術館はHans Josephsohnの彫刻作品を飾るための空間。外観はまるでコンクリートのmass。彫刻みたい。開口部は上部にあるだけなので、壁の存在感が非常に強く感じられる。入り口はアプローチの反対側にあって、入るまでの時間差が内部への興味を湧かせる。内部へ。意外に明るい。もっと重厚な空間を予想したが季節のせいかそれほどでもなく、それほど劇的には感じられなかった。ハイサイドから入ってくる光がコンクリートに映える。高さの違う3つの大きな展示室には基本的にそれぞれ違う種類の彫刻が飾られていて、彫刻の特徴に合わせたようにも感じられる。展示室をつなぐ開口部はコンクリートを切り取ったようなシンプルでエッジの効いた仕上げ。余計な装飾やプログラムは一切なく、「どうだ、いい空間だろう?」と言わんばかりのミニマルさ。小細工をせず、余計なお金をかけたふうでもなく、マテリアルと空間がそこにあるだけのような静かな力強さを持っている。村自体が崖を切り崩したような谷にあり、建物の存在感は自然と対峙しているようにも見える。派手ではないが、なかなか作れる空間じゃない。

左が鍵を借りたカフェ。店の人も慣れたもんです。時間があったのでGiornico街を散歩してみる。石積みの町並みが印象的。それにしても、橋がスゲーきれいで、この風景によく合うね。まあ、ちょっと街の外に出れば、そこには郊外型の住宅もちらほら見られるわけで、街の人たちの努力のおかげでこの景観が保存されているんでしょう。街の上にある石積みの教会もいい迫力を感じさせてくれました。

再びバスに乗ってBellinzonaへ。街の中央部に位置するCastel Grandeへ。12~13世紀に建設された要塞都市の中枢部分。南側に長くのびる壁はmurata(ムラタ?)と呼ばれている。なぜか日本的な感じがしてしまった。。。近年Aurelio Galfettiという建築家によって改修され、エレベーターとmuseum部分ができたみたい。museumの外壁(写真右)はまたもやミニマルさを感じさせる壁の存在感がすばらしい。ミニマルさは壁の素材感、時間性やオブジェクトそのものを見せるために有効な手段のように思う。もちろん、もの自体が一番重要であることに変わりはないのだが。残念ながら内部は昼は見られず。改修としてもVeronaにあるCastelvecchioを思わせる質の高さ。ただ、museumの空間は古い空間を活かしきれていない。展示の内容、展示方法が問題のような気もする。天気が最高に良く、心地の良い時間を過ごさせてもらいました。
memo
“La Congiunta”
Architect: Peter Märkli, 1989-1992
Address: Giornico, Ticino
“Castel Grande”
Architect: Aurelio Galfetti, Restauration, 1985-1991
Address: Bellinzona, Ticino

Flims, Chur: 家型の意味とは?


Zurichから鉄道で1時間ほどでChurへ。今回はETH同期のコムさんに連れられ、ちょっと田舎のFlimsへ。お目当てはValerio Olgiati設計の”Das Gelbe Haus”(Yellow House)。もともと黄色の建物を改修したのでこういう名前がつけられているらしい。現在内部はギャラリーとして使われていて、ちょうどChurを中心とするグラウビュンデン地方の建築がテーマになっていた。ひととおり見ていると、家型の印象が強い。屋根と壁の境界を隠し、家型のMassとして表現して、そこにシンプルな開口部をVoidとして空けるというのがスタイルらしい。ここまでくると、別に家型じゃないくてもいいのでは?とも思えるが、きっと家型であること自体がイメージとして意味を持っているんじゃないかな。同時に素材をシンプルに使うからシルエット自体が印象として残る。Gelbe Hausは屋根を見せないようにして、むしろMassとVoidと素材感を感じさせるオブジェクトみたいな印象。

この地域は、Valerioの父親であるRudolf Olgiatiが活躍したところで、彼の作品もいくつか見る事ができる。画像は”Apartmenthaus Las Caglias”と近くの住宅。妻側の壁を屋根よりも高くして、やはり家型を強調させている(彼の場合は完全家型ではなくて組み合わせ)。ふと、Robert Venturiの家を思い出して、ポストモダンの意味性を含んでいるんじゃないかと考える。彼の表現の特徴は面の使い方。開口部の奥行きが3パターンくらいあって、その組み合わせでレイヤーを構成している。きっと内部空間のキャラクターとも関係があるのでは。外壁の上に屋根が載っているという構成ではなく、外壁を延ばして家型を強調したときに、面の操作という関心が生まれたんじゃないか。そしてその操作はとても感覚的に見えるが、内部との関係も考えられているとしたらおもしろい。

Churに戻って、Peter Zumthor設計の”Roman Excavations”へ。前回入れなかったのであきらめていたら、Churで働いているナイトウさんがMuseumで鍵を借りて入ることを教えてくれ、無事に内部へ。内部のトップライトからの光は絶妙。外壁はルーバーみたいになっているので、外からも光が入る。夏は緑色に見えるらしい。ローマ時代の遺跡を残すためのシェルターということもあって、建物自体はすごく軽い感じがする。
同じくChurで働いているシミズくんも呼んで、事務所の仕事などについて聞いてみる。やっぱりここの人たちはこの地方が好きらしい。夏は事務所みんなで山にハイキングにいくんだって。そういう設計事務所って日本にあるんでしょうか?
memo
“Das Gelbe Haus”
Architect: Valerio Olgiati, 1997
Address: Flims Dorf
“Apartmenthaus Las Caglias”
Architect: Rudolf Olgiati, 1960
Address: Flims-Waldhaus
“Roman Excavations”
Architect: Peter Zumthor, 1985-86
Address: Seilerbahnweg, Chur

やっぱ寿司と音楽だね。


 レビューも終わってリラックスしたところで、さっそく打ち上げ寿司パーティを開いてみました。もう一人の日本人のコムさんにも手伝ってもらって、今回のメニューは巻き寿司、にぎり寿司(サーモン&マグロ)、手巻き寿司、お好み焼き、そして豚汁。寿司好きなスイス人・アンディも手伝ってくれて、盛大なパーティーになりましたよ。だいたい15人分くらいで、17000円くらいかかったかな。久しぶりに食べた寿司はやっぱうまかった〜、そして豚汁もうまかった〜。スタジオのみなさんも満足してくれたみたいで、日本人でよかったな〜と思える瞬間です。

 そして次の日。スタジオを掃除したご褒美にコンサートの無料チケットをゲット。ついに、やっとコンサートに行ってきました。湖沿いのTonhalle(Grosser Saal)であったOrchesterakademie(大学のオーケストラ?)の演奏。曲目はぜんぜん聞いた事なかったんですが、Othmar SchoeckのSuite aus der Oper とSergej ProkofievのSinfonie…とかっていうやつでした。ホール自体はそこまで大きくはないんですが、とても装飾の美しい空間で、市民のためのコンサートっていう感じでした。こんな本格的な(自分にとってはですが)コンサートはホントに久しぶりだったからかわかりませんが、なぜか音楽ってどうやってデザインするんだろうかと疑問に思う。
1。そういえば現代に偉大なクラシックの作曲家っているんだろうか?現代人は過去の偉大な作曲家には勝てないのか?100年も200年も前の曲が演奏され続けて更新されないのはもはや作曲家がいないか、もしくは演奏ではなく曲自体の善し悪しを評価できる人がいなくなったかどちらかなのではないか?
2。建築の場合は新しい技術とともに形態も新しくなるけど、楽器って新しくなってるんだろうか?音ってよりよくなってるんだろうか?いままで聞いた事ないような音ってあるんだろうか?作曲家は必要であれば音も開発するんだろうか?
3。同じ楽器でも奏者それぞれが違う音を演奏しているとして、オーケストラのディレクターってそれをわかってメンバーを集めているんだろうか?奏者はそこに個性を見いだして、自分にしか出せない音を自覚しているんだろうか?
4。作曲家は音を記号化して作曲しているはず。ド・レ・ミってやつ。でも実際はド・レ・ミの間にも無数の音が存在しているはず(コンサートマスターがいちおうの基準を決めたとしても)。しかもその振れ幅が30人とかのオーケストラ一人ずつに存在するとして、その振れ幅まで理解して演奏しているとすれば、それは奇跡的なデザインに近いのでは?
5。ポップミュージックって短いパターンの繰り返しであることが多いからだいたい次の音のパターンって決まってる、しかも記号そのままで演奏しているように思うけど、クラシックって次の音が読めない気がする(もちろん自分の聞いてる数が少ないのも原因だけど)。きっとデザインの幅が広くて難しいのでは。
なーんて考えてました。わかる人いらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。やっぱリラックスすると頭がまわるな〜。