Ulm: 要塞都市の現在


(画像左:大聖堂外観 中:同内観 右:頂上付近の構造)
Geislingenからハジメ君とともにUlmへ。UlmはStuttgartから南東へ70km程度いったところ。ちなみにAlbert Einsteinが生まれたところとしても知られている。
早速Ulmの大聖堂の塔に登る。高さ161mは教会として世界最高のらしい。大聖堂に登るといつも思うけど、よくもまあこんな高いところまで積み上げるものです。高さへの憧れは今も変わっていないような気がするけど、そんな人間の欲望のために、命を懸けてつくりあげる職人の情熱というやつは本当に素晴らしいと思う。

(画像左:街を流れるドナウ川 右:大聖堂に登って記念写真。)
Ulmは中世に交通の主要都市として栄えたかつての要塞都市。ドナウ川沿いには要壁のあとを見る事ができる。現在はオープンスペースとして利用されていて、市民にとっても観光客にとっても魅力的な場所になっている。街の中に巡らされている用水路と古くからの特徴的な建物を活かした街のデザインは十分に街の魅力を引き出していて、とても居心地がいい。街の中心部である大聖堂周辺では、新しい現代建築が建設されている。こんな特徴的なコンテクストをもった都市に新しい建築を融合させるのはとてもやりがいのある仕事のように思う。

Stuttgart:時代を感じさせるコレクション


(画像左:Mercedes Benz Museum外観 右:表面の仕上げ)
Easterは新潟時代の友人のハジメ君を訪ねてStuttgart方面へ。彼が住んでいるところはZurichから4時間ほど、StuttgartとUlmの間にあるGeislingenという街。ちょうど聖金曜日だったので大聖堂でBachのJOHANNES-PASSIONを聴く。ソロ部分ではたった一人の歌声なのに大聖堂の空間を通して振動が伝わってきて感激した。
Stuttgartへ。久しぶりに大きな都市に来た感覚。スイスの小ささを実感する。早速Mercedes Benz Museumへ。車体を思わせる曲線のボリュームが存在感を示している。中央に吹き抜けとエレベーターシャフトを配置し、展示空間はちょうど3つ葉のクローバーのように配置されて、少しずつ高さを変化させている。動線は時代を追っていくメインの2つの葉っぱとテーマごとのコレクションが別れていて、経験としてはコレクションの区切りにコラムが挟まれている作品集を見ている感じ。UNStudioによる作品紹介はこちら

展示自体はとてもカッコイイ。技術を高めながらデザインを洗練させていく技術革新も素晴らしいが、2つの世界大戦の中で苦難を乗り越えながら第一線のクルマを開発・提供し続ける姿勢には感激した。自分の中では300SLcoupeが1955年に開発されていることに一番驚いた。しかもそのデザインは決して古さを感じさせないところが素晴らしい。Stuttgartの歴史はMercedesとともに歩んで来ていると考えれば、Mercedesは市民にとっての誇りなのだろう。

Stuttgart郊外に位置するWEISSHOFSIEDLUNGへ。1927年にドイツ工作連盟によって開催された住宅展覧会の会場。委員長だったMies van der Roheが建築家を招顎した近代住宅建築のコレクション。Le corbusier&Pierre Jeanneretによるno.14/15は現在WEISSENHOF MUSEUMとして公開されている。いくつかは失われているが、住宅展覧会の作品が80年ほど経ってもいまだに住まい続けられていることが素晴らしいと思う。建築単体としてではなく展覧会全体として、その時代を現在に伝えることはとても意味がある。Le Corbusierらの作品はとてもコンパクトでありながら、すでに空間を変化させる仕組みを持ち、とても巧く空間を操作している。その深い考え方はやはり古さを感じさせない。

Stuttgard の中央広場の近くにあるパッサージュはとても印象的な空間。反外部的な空間として利用され、非常に効果的な空間のように思う。近くにこの発展形が見られた。画像左はコートヤードを局面のガラスで覆っている。雨の処理等に疑問をもったが、空間としては気持ち良さそう。広場の近くの新しいモール(画像右)も発展形だと思うが、表参道ヒルズやイオンモールに非常に似ている印象を受ける。ここまでくると半外部的な感覚が薄くなるからパッサージュというよりはコミュニティスペースに近い。屋外の雰囲気から比べてもどこか閉じた印象を与えている。パッサージュの進化を見てみるとおもしろいかもしれない。
memo
“Mercedes-Benz Museum”
Architect: UN studio, 2006
Address: Mercedesstrasse 100, 70372 Stuttgart
“WEISSENHOFMUSEUM IM HAUS LE CORBUSIER”
Architect: Le Corbusier & Pierre Jeanneret, 1927
Address: Rathenaustrasse 1, 70191 Stuttgart

11年目。


 スイスも春を迎えました。日本でのこの季節はいつも新鮮な気分になれて、やる気が湧いてくる季節だったんですが、こちらではあまり感じられないかな。日本の春っていい季節だな〜と改めて感じました。
 そして、春が来たのと同時に建築学生11年目を迎えました。僕が建築の勉強を始めたのが1997年の春。もう一昔前の話になってしまいました。そして10年経った今もまだ学生なのですが、本当にそんなに長く勉強してきたのかと思うくらい、まだまだ知らない事の多さに驚かされています。むしろ、今までこんなにたくさんの情報や知識があることに気がつかなかったことが不思議に思えるほどです。やはり日本では閉じられた環境に自分を置いていたということだと思います。
 ちょっと日本という枠を広げただけで、1年や2年ではとても身につけられないくらいの魅力的な建築の知識や考え方が見えてきました。毎週のレクチャーや特別講義、アシスタントとのディスカッション、同僚との普段の会話に至るまで、自分にとって新しいことばかり。まるで10年がリセットされたかのように、建築の深さを味わっています。環境がいかに大事か、もちろん全ては自分次第であることは変わりないけれど、環境を選ぶことの大切さを実感しています。

(画像:ゲストを迎えてのファーストレビュー。)
今やってるエチオピアのプロジェクトも日本とはあまりに違いすぎるので、正直なところ行ってみないとわからないんだろうけど、自分が10年蓄えた知識や考え方がいかに使えるか、しっかり試してみたいと思っています。