イースターの休暇を利用して、ギリシアへ行ってきました。スイスに来て以来、なぜかギリシア人と縁があるようで友人も多いのですが、彼らの故郷をぜひ見てみたいと思い立ち、5日間のショートトリップに出かけたのでした。
ギリシア人の友人にガイドしてもらいながら、アテネから南西へ70km、半島の最南端に位置するCape Sounionへ。このあたりのランドスケープは山の木々も背が低くまばらで、エチオピアの山を思い出しました。穏やかな海に多くの島が浮かぶ景色は最高です。
岬の先端にそびえるポセイドン神殿。BC444年に完成。約2500年前にこんな建造物がつくられたという事実は驚きというほかにありません。今回見たいくつかの神殿に共通して言えることですが、細部の装飾や、石の組み合わせ、全体のプロポーション等、ここまでデザインされていることには感嘆するばかりです。時代は違っても、そのこだわりは現代でも賞賛されるべきものです。
それでもって、エーゲ海ですよ。少し日本の瀬戸内海にも近い印象でしたが、スケールが大きくて穏やかな表情は、杉本博司氏の「海景」シリーズを連想させる。
ということで、久しぶりのブリッジ。日本ではもはや時代遅れ感が漂っていますが、こちらではまだ評判上々です。
アクロポリスから眺めたアテネの中心部。アテネ市の周辺の含めた市街地の人口は約310万人で人口密度は約7600人/km2、日本で言うと横浜市の規模に近いか。それにしても、高層ビルがほとんど見当たらない。中心部は7つの丘がランドマークとなっているが、残りは10km離れた港が見渡せるほどフラット。景観に対して非常に敏感な街であることが読み取れます。
街のなかには古代の教会などの建造物が多く残されていて、ショップが並ぶ街路を歩いていると突如として現れ、たまりの空間をつくっている。
Ancient Agoraにあるヘファイストス神殿。BC415年完成。ギリシアで最も原形を残していると言われている。ただ単体のオブジェクトとして保存されているだけでなく、アゴラ全体、アクロポリスという大きなエリアで保存され、かつての街の文脈を読み取ることができる。
同じくアタロスのストア。1950年代に復元された。過去の建造物を現代に復元することには懐疑的だったが、ここまで忠実に復元されると誰もきっとその価値を疑わないだろう。
アクロポリスの脇に位置する、ディオニソス劇場。屋外円形劇場の基本はここにあり、ですね。ちなみに僕の地元に近くにある、磯崎新氏の利賀芸術公園・屋外劇場もギリシアの劇場からフィーリングを得た名作です。
同じくイロコ・アティコス音楽堂。背景にアテネの街が見えるのがまた圧巻。
アクロポリス内、パルテノン神殿。BC432年完成。修復工事中で落ち着いてみられなかったが、緻密に設計されている様子は窺えた。いつかこの空間を体験してみたい。
同じくエレクティオン。こちらはもう少し細かい装飾が見え、力強いというよりは、繊細という印象。
同じくプロピライア、BC437-432年建設。
市内から少し離れたところにあるSantiago Calatrava設計のオリンピックスタジアム。運悪く雨が降っていたからかもしれないが、どこか寂しい雰囲気が漂っていた。スタジアムのメンテナンスも決して良いようには思えなかった。
同じくOlympic Agora。曲線が美しく、画になるのはさすが。でも運営やソフト面での問題がありそうな気がした。カラトラヴァという建築家の作品がオリンピックのためにすでに消費されてしまった印象が感じられて、なんとなく悲しかった。
ETHの同期だったDimitraと再会し、BPABEIA Awards 2008のオープニングへ。同賞はギリシアで最も重要な賞のひとつらしい。同時期に日本建築学会の作品賞も発表されていて評価の違いが少し見えたことも興味深かった。
受賞作品は以下のとおり
HOUSE IN PSYCHICO / PANTELIS NICOLACOPOULOS
REGENERATION OF NEA PARALIA / PRODROMOS NIKIFORIDIS, etc.
THE BREEDER GALLERY / GR405 ARCHITECTS
ギリシアと言えばやはり島が有名ですが、今回は強行日程のため近場のエギナ島へ。偶然も偶然ですが、スイスの同じ寮に前に住んでいて、今はオスロの大学で働いている友人に会いました。いや、普通あり得ないよ、そんなこと。建築関係の友人ならまだしも。。。
海の色に感動して泳ぐことを試みたものの、水がまだ冷たくて断念。次の楽しみにとっておきます。
島の典型的な住宅のスタイル。外部に2階に上がる階段がついていて、前庭の空間がとても魅力的に見える。なぜここに階段がついているのか、1階は仕事場で住宅は2階とか?気になります。
同じくエギナ島にあるアフェア神殿。BC570年頃建設。ドリス式の柱が力強い。柱が一枚岩から出来ているところが他の神殿とは違うところ。
最後にアテネのリカヴィトスの丘から見た夕日。アテネの印象として、他のヨーロッパの都市と比べると街並みは多少ごちゃごちゃしていますが、白を基調とした色使い、素材の使い方、高さ等の制限がおそらくしっかりしていて、街として遺跡と共存するというコンセプトが見えているような気がしました。
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