Parallel Urbanism at Japanese Junction


先日Nanyodo N+で行われた「JAPANESE JUNCTION」に出展したETHでのスタジオ課題のムービーです。


„Parallel Urbanism in Addis Ababa „ (7:55)
Editor: Noboru Kawagishi
Source films:
„Learning from Schwyz/Addis“ (2008)
Prof. Marc Angélil, ETH Zurich
Schwarzpictures.com
„Learning from Addis 1“ (2007)
Vanessa Meister
„Addis Panoramic“ (2008)
Noboru Kawagishi
The project was done by Matthew Gerald Skjonsberg, Sebastián Alfaro Fuscaldo and Noboru Kawagishi, in the frame of ETH MAS Urban design in 2007.
This film was presented in the exhibition “Japanese Junction” in Tokyo, in September 2010.

CITIES OF CHANGE ADDIS ABABA


ETH ZurichのMAS Urban Designで行っているエチオピアでのアーバンデザインプロジェクトがBirkhaeuserからとうとう出版されました!3年間のEthiopia Urban Design Studioの成果が詰まった、内容のある本に仕上がっています。
川岸が在籍していた1年目のスタジオからも川岸とMatthew Skjonsberg, Sebastián Alfaro Fuscaldoによるプロジェクト、”Parallel Urbanism”を含む2つのプロジェクトが掲載されています。エチオピアの急速に発展する都市において、多くの問題を抱えた状況をふまえてどのような都市が提案可能であるか、世界各国から集まったアーキテクト、アーバンデザイナーによる、たくさんのアイデアが詰まった読み物です。
これまで多かったリサーチ本ではなく、リサーチをもとにしたデザインを志向しているところがこのスタジオの特徴です。数年後にこれらのアイデアが実現されることがあれば、多くの建築家やアーバンデザイナーの注目を集めることになるでしょう。
それにしても、自分が関わったプロジェクトが出版されるというのは、本当に嬉しいものです。少しでも多くの人に興味を持ってもらえればと思います。

Swiss Pavilion

The Swiss Pavilion at the 11th International Architecture Biennale Venice.
ヴェネチア・建築ビエンナーレのスイス館。何と言っても驚きはブロックで作られた3次元にうねる壁。緻密に作成されたプログラムに従って、ロボットが積んでいったものです。精密な作業が得意な日本人なら人の手でもできるかもしれませんが、ズレと角度をそれぞれ計算していくのは簡単なことではありません。人の代わりとなるロボット技術ではなく、むしろロボット技術でしかできない空間というのもあり得るのではないかと思わせてくれました。
川岸はETHでやったエチオピアのアーバンデザインプロジェクトを担当しています。中央のスクリーンに映されているムービーではエチオピアとスイスの両方で撮影した都市の雰囲気や人々などを比較しながら、それぞれの都市としてのクオリティを見せようとしています。結果としては都市自体を伝えることはやはり難しく、デザインプロジェクトとの関連性を見せるのもこれまた難しく。。。アカデミックなアーバンデザインプロジェクトをどうやって見せるか、または評価するか、はすごく重要な課題だと思います。
13日のディスカッションではチリの建築家アレハンドロ・アラヴェナとカリフォルニアの建築家テディ・クルツによるスラムエリアのUPGRADINGプロジェクトが非常に印象的でした。やはりこれくらいチャレンジングなものをやって初めて、新しい建築のタイポロジーが生まれるのかなという気がしました。おもしろいのでぜひ一度見てみてください。
ELEMENTAL / Alejandoro Aravena
http://www.elementalchile.cl/
Estudio Teddy Cruz
http://estudioteddycruz.com/

The wall by Gramazio & Kohler was really impressive. It is used as a partition, but it also acts
as a screen or an art. It has a strong impact, a lot of people were coming witnessing this strange wall. Then you can find it was made by a robot. Amazing!

This part was the urban design project in Havana, Cuba, by LAPA from EPF Lausanne. I liked their approach to start from urban research level, to mock-up prototype.

The making movies of digital fabrication designed by Gramazio & Kohler. I thought it is quite new. Because normally structure is required only for strength, decoration part is added on the structure, but this structure has already artistic senses without having an additional layer.

This is our exhibition. I was mainly working for the movie it is shown on the screen. Our movie provides a sense of both cities, Addis Ababa in Ethiopia and Schwyz in Switzerland, in order to compare and find out characteristics of each city.

On the 13rd of September, there was a symposium organized by Reto Geiser and Andreas Ruby. Prof. Marc Angélil was presenting the aim of our Ethiopian project.

The presentation of Alejandro Aravena and Teddy Cruz were really impressive, they both presented their urban upgrading projects in Chile and in Tijuana. Their upgrading prototypes were well considered and successful projects.

ADDIS Project 2008

昨年に引き続き、エチオピアの首都、アディスアベバでアーバンリサーチをしてきました。
その一部をご紹介したいと思います。(昨年からのエチオピアプロジェクトのエントリーはこちら

4月11日
アディスアベバに到着。チューリッヒからイスタンブール経由で、到着したのが深夜1時前。昨年もお世話になった友人たちに再会。まさか今年も戻って来られるとは思っていなかったから嬉しい。ボレ国際空港はエチオピアカラーにライトアップされていました。

そのまま午前中からアディスアベバ大学で1日目のプレゼンテーション。大学の教員、ゲストの建築家、学生など、今年も多くの人たちが見に来てくれました。前半はHousing、Upgrading、Mercatoの各プロジェクトの発表(詳しいプロジェクトの内容はこちら)。ランチを挟んで後半はCentral Park、Olympic、Tourismの発表。ちなみに川岸は今回エキシビジョンのためのビデオ撮影担当として来ているのでプロジェクトの発表はしていませんが、ティーチングチームとして各プロジェクトをサポートしています。

4月12日
2日目はCoffee、Energy、Agricultureの各プロジェクトの発表。今回も地元の建築家のほか、市の住宅開発部門の代表、開発区の都市計画家等を招いてのディスカッションは非常に熱い議論になりました。昨年よりもリサーチの密度、情報の信頼性が増し、各提案もより説得力を持っていたように感じました。これからデザインをするにあたって、各方面から厳しい意見やアドバイスをもらいました。

そのまま見学ツアーへ。街の中では至る所で建設中の建物が見られます。木材で組み立てられた足場やコンクリートの精度を見ると大丈夫なのか不安になるほどですが、これが今のアディスアベバの成長スピードを象徴しています。1年間に3万戸の住宅建設が政府から計画され、建設されています。

昨年9月のエチオピア・ミレニアム(エチオピア暦では現在が2000年です。)を記念して計画されているミレニアムパークの植樹に参加。世界各国から集まった建築学生グループが関心をもっているということで、後日新聞とテレビで報道されました。ミレニアムパークのデザインは今後コンペを実施して決定されるそうです。

市の中心にある10階建てのビルの屋上から見た夜景。夜景とは言っても派手にライトアップされているのは最高級のシェラトンホテルくらい。市の中心部でも電力不足で週に数回停電が起こるほどなので、夜景のために電力を使うほどではないことは理解できる。それにしても、建物の高さが低い。これから中心部の密度を上げるために中高層のビルを建設しはじめたら、都市景観も随分と変わるはずです。

4月13日
市内ツアー。まずは街の北に位置するエントト山の頂上にある、Entoto Mariam Churchを見学。敷地内に博物館があって、かつての王が城をエントトに構えたころからの歴史を学びました。

教会からアディスアベバの街を見下ろすことができます。

そのまま市内から30分ほど離れたSlulutaへ。少し街を出ただけで、一気に建物が減って、土壁の住宅と家畜の田舎の風景が見られるようになります。これがここに来る前に自分が持っていた「アフリカ」の印象。ちなみに、アディスからSlulutaへつながる道路は日本の援助によって建設され、Kajimaが施行したらしい。ということで、道路建設のために現場事務所がある村にはKajimaという名前がつけられていることを発見。最近は専ら中国からの投資が目立っているが、日本もちゃんと貢献していることを知りました。

東の住宅開発地区へ。去年は空き地だった場所が今では住宅建設がすごい勢いで進められている。農家が土地を失い、どんどん郊外へ追いやられています。道路上でロバや家畜に遭遇することも珍しくありません。

建設現場の様子。木組の足場が非常に印象的。鉄製の足場を生産して、使う予算がないのだとか。見た目はなかなかクールでもやはり強度が不安。

住宅開発地区の最東端。一気に大草原の雰囲気。すでにエチオピア航空の住宅地開発が計画されているらしい。都市の輪郭が急激に拡張されていることがわかります。

4月14日
午前中はスラム地区のUpgradingプロジェクトの見学。その前に、ロゴがスターバックスに非常に似ていることで有名なKALDI’s Coffeeへ。車を泊めただけで店員が来てくれて、そこで注文できます。もはやドライブスルーどころではありません。エチオピアで車内空間の多目的化を実感しました。

昨年も訪れたSister Jemberが始めたIHA-UDPを見学(Websiteはこちら)。約10年をかけて、スラム地区の住宅を改善する事業を続けてきた団体(おそらくNGO)。住宅の改善だけでなく、教育施設、職業訓練プログラム、研究者育成のための大学も構え、総合的かつ継続的な活動を続けている。彼らがこれまでに達成した既存のコミュニティを保持しながらのスラム地区のUpgradingプロジェクトは素晴らしい成果を残しています。しかし近年、政府が都市中心部の高密度化を図るうえで、スラム地区を郊外へ置き換えようとする政策によって、もはやスラムをアップグレードする活動自体が許可されず、もはや現在のコミュニティの形態を維持すること自体が難しくなっています。都市が抱えているこのような問題に対して、彼らをはじめ多くの建築家、アーバンデザイナーたちが真っ向から立ち向かっています。

午後からは街を流れる川沿いの調査へ。川沿いはゴミ溜めとなっている空間ではありますが、所々に農業も見られ、今後改善されるべき、改善できる潜在性をもった空間と言えます。
(ゴミにまみれながらビデオを回す川岸。)

この風景だけ見ていると、とても400万人の都市の中心部とは思えません。この都市と農村のクオリティを共存させることができればおもしろい都市が誕生すると思うのですが。

4月15日
Energyグループに同行してSlaughterhouse(食肉センター?)へ。ここから排出される有機物エネルギーの再利用実態について調査するためです。実は初めてこういう空間に入りました。エチオピア正教の復活祭前の食物制限期間中だったため、残念ながら(幸いにも?)清掃期間中でしたが、すべてのプロセスとその空間を見学させてもらいました。

最後にたどり着いたのは川沿いに位置するBone Yard。文字どおり骨の廃棄場。廃棄場とはいっても、消却されているわけではなくて、そのまま自然に戻るのを待っている状態。周辺にはかなり生臭い匂いが漂っています。そのまま川の水を汚染しているので、近いうちに解決されるべき問題と言えます。ちなみに、この廃棄場はさきほどの農作地の川を挟んだ対岸に位置していて、ものすごいギャップです。

そのまま市のゴミが集められる廃棄場へ。ここがEnergyグループの提案の計画地。広大なゴミ山の空間を緑に覆われたバイオエネルギーの生産装置として提案しようとしています。

それにしても、このゴミ山のド迫力はすごい。残念ながら実際に中に入ることはできませんでしたが、ここでゴミを集めながら生活している人たちも存在しています。ここを緑の空間としていかにリアリティをもって提案できるかが勝負どころです。

午後からCentral Parkチームに同行。市の中心部に位置する広大な緑地、pikok parkへ。アディスにあるビール会社St. Georgeが所有しているらしい。10年以上前のオープン当初は10万人ほどの入場者を記録してましたが、現在は入場者数が減少しています。ただの公園ではなく、敷地内に農家のための住宅地と農作地を併設しています。

敷地内では都市の中心部とは思えない、緑豊かなクオリティをもった空間を見ることができます。しかし、すぐ周辺には中高層ビルも建ちはじめ、立地の良さと規模、現在の採算の不効率性からして、すぐにでも住宅開発またはリゾート開発が進められてもおかしくないと思われます。この成長する都市のなかでは、公共のための緑地を維持することも難しくなっています。

4月16日
Agricultureのグループに同行してBio Farmへ。家畜の排出物からガスを抽出するシステムをはじめ、コンポスト、いろんな形態の植栽など、いろんな技術を見学。

教育施設と大学も併設されていて、環境教育から最先端の研究まで包括的なプログラムを実践しています。こんな先進的な実例がエチオピアにあるとは・・・自分の無知さにショックを覚えます。

午後からUpgradingグループの調査へ。プロジェクトを提案する敷地を一通り歩き、ひとつの住居を見せてもらい、インタビューもしてみる。それほど貧しい人たちではないようでしたが、それでもやっぱり公営住宅を買うまでにはほど遠い。ちなみに、アディスアベバの世帯の50%が月収300ETB(約30USD)以下で、この収入では賃貸住宅に住むことはできないため、どうしてもコミュニティが提供する住居か、不法な住居に住むしかない状況にあります。

コミュニティのつながりも強く、多くの活動は外部の共用スペースで行われています。この地域は開発地区に指定されていて、彼らは数年後には立ち退きを強いられることにが決まっています。コミュニティがそのまま他の場所に移り住めるかどうかも疑わしいところです。Upgradingグループは開発と既存コミュニティを共存させるための方法論を提案しようとしています。

最後はマーケットグループに合流。現在は使われていない鉄道沿いのマーケットでインタビュー。多くの人で賑わっています。ビデオを撮影していると、必ず子どもたちが近寄ってきます。テレビか何かの撮影と勘違いしているらしい。まあ、もしかしたら使うことになるかもしれませんが、残念ながらほとんどゴミ箱行きです。。。
4月17日
昨年チューリッヒに客員教員としてきていたZegeyeの設計事務所で新しいプロジェクトを見せてもらう。それにしても、大きなプロジェクトばかりで驚きます。日本でこんなに大きいプロジェクトに取り組む機会はまずないと思われます。ふと、ここで働いてみたいと思う。
午後パノラマビデオ撮影のテスト。光の設定が難しいが、面白い画像になりそう。
深夜、グループが滞在を終えてスイスに向けて出発。川岸はあと1週間滞在したため、グループをお見送りしました。去年よりは一日増えたとは言え、非常にタイトなスケジュールでしたね。でも、なかなか良い調査ができたようなので、今後のプロジェクトに期待です。
Learning from Addis Website
http://www.angelil.arch.ethz.ch/mas/

Second time to Addis Ababa



Prof. Marc Angelilを招いての中間講評を終え、いよいよエチオピアへ行ってきます。最初の1週間はスタジオのメンバーと一緒に大学でのプレゼンテーションやそれぞれのトピックに関するリサーチ、2週目は個人的にMercatoと呼ばれる東アフリカ最大のマーケットをリサーチしたいと考えています。今回は時間もゆっくり作れそうなので、身のある成果を持って帰ってきたいと思います。

ETHiopia 2nd Season


大学に戻ってきてから、昨年やったエチオピアのアーバンデザインプロジェクトに取り組んでいます。自分だけ2回目ということもあって、今年はムービーを使ってのリサーチプロジェクトをやってみることにしました。教授、学生へのインタビューや現地でのインタビュー、Addisでの撮影を組み合わせて、現在のAddis Ababaの都市を描写してみたいと考えています。目標はLagos Wide & Close。マクロの視点とミクロの視点を組み合わせて、そこにある問題点と可能性を浮かび上がらせることができれば、Lagosとも比較しやすいし、他のアフリカの都市とも比較できるのではないかと考えています。
このAddis Ababaでのプロジェクトは今年9月から開催のVenice Biennale, 11th International Architecture Exhibition – Out There. Architecture Beyond Buildingにおいて、スイス館の一部として出展される予定になっています。力強い作品にしたいと意気込んでいます。
上記の画像は、Addis Ababaの道端で清掃の仕事をしている女性に焦点を当てて、人々の生活や周辺の状況を描いたドキュメンタリー映画『Sweeping Addis』の上映会。監督のCorinne Kuenzli氏は制作のために現地で1年半の時間をかけたそうです。撮影現場のエピソードやエチオピアでの生活、経済状況について話を聞く。ターゲットを見つけて、スポンサーを探して、後に出演者が非難を浴びないようにすることにも細心の注意を払ったそうです。ムービー撮影時のアドバイスも頂く。彼女が言うには、アマとプロの映画の最大の違いは映像ではなく、音声だそうです。さすがにスタッフは雇えないから、音声と映像を分けて使うのが手かもしれない。
昨年の作品のムービー(Vanessa Meister監督)がYou Tubeにアップされています。
Project1:Tracking Addis
Project2:Surface City
Project3:Parallel Urbanism
Project4:Mixcity

Learning From ADDIS


最終プレゼンが終わってからはや2ヶ月。旅行に行ったり、イベントに行ったり、バタバタしながらも、今学期のアディスアベバのプロジェクトが1冊の本として仕上がりました。その名も「Learning From ADDIS」。最初は100ページ前後で計画していたものの、やはり自分たちのプロジェクトの意味を伝えるには足りなかったようで、なんと300ページものボリュームになってしまいました(さすがに少し多すぎる気もしますが)。
ちなみに、完成して披露された後に、すぐにアシスタントからチェックが入り、いまだに作業をしているというのが本当のところなのですが。ただ、本をつくるプロセスの中で、自分たちが伝えたいことを再確認できたことは大きな収穫だったし、性格も価値観もバラバラな14人の成果をひとつのモノとしてまとめられたことはむしろ驚きです。

そして、これがアディスアベバでのプロセスをまとめたショートフィルムです。さすがにプロに手伝ってもらっただけあって、いい仕上がりになってました。メンバーの困惑した表情や、現地の人々の表情がしっかりと映し出されてます。自分のインタビューの部分もあるんですが、やっぱ、自分の英語って微妙だな。。。
これでETHのMASも終わり、メンバーもそれぞれの道へ旅立っていきました。
いろんな理由で僕だけあと1年残ることになるのですが、
やっぱり1年一緒に過ごしたメンバーと別れるのは寂しいものです。
僕も来週からチューリッヒの設計事務所でインターンです。
たくさん吸収したいと思います。

Final Reviews, Ethiopia Project


(画像左:オープニング、右:FeiとつくったFilm)
スイスに来てから9ヶ月ほど。早いもので、もう1年目の最終プレゼンが終わってしまいました。特にこのセメスターは短く感じましたね。やっぱりエチオピアから帰って来てから時間がなかったせいだと思いますが、まだプロジェクトの途中のような印象ですね。
さて、この課題の成果物としてはもちろんデザインもありますが、アディス滞在中にFeiと早起きしてストリートチルドレンの生活を取材した、ショートフィルムも制作しました。コースとしての現地でのスケジュールは、大学やディベロッパー、NGOなどのフォーマルな場所で多くの時間を費やしたので、人々の生活そのものを感じる機会は少なかったわけですが、僕たちがストリートチルドレンの生活を追いかけて感じたものは、むしろ僕たちがデザインするうえで知らなければならない現実でした。これを現地の感覚がない人々に伝える事はとても難しいのですが、このショートフィルムは僕たちのプロジェクトの中でも重要なメッセージになっていると思います。

(画像:プレゼンテーションの様子)
今回のプロジェクトは、アメリカ人のMATTHEWとコスタリカ人のSEBASTIANという30代の建築家たちとチームを組んで、大きいスケールながらもできるだけ空間的な提案になるように心がけました。僕たちの提案は、開発地区に流れる5本の川を背骨にして、乱立する新しい建物群に囲まれながらも、現存する家畜やインフォーマルなマーケットのような、人々の生活の根幹となるアクティビティを許容できる空間を提案しています。
 アディスでは多くの川ははっきり言って汚く、トイレやゴミ捨て場として使われているのが現実ですが、ゾーニングの境界になっていたり、人々が洗いをするのに集まって来たりと、空間的なポテンシャルは高いと思います。そんな川沿いの空間を魅力的な空間として現地の人々に見せる事が第一の目的でした。まだ空間的な魅力を見せるまでには至っていないのですが、徐々に変化させていく方法の提案とともに、もうしばらく案を発展させたいと考えています。
 さて、実は今回の最終プレゼンで気がついたのですが、僕たちがこのコースでやってきたことっていうのは、言ってみればすごく中途半端なんですよね。建築の分野とはスケールも違うし、建築のデザインにそこまでこだわってるわけではない。かといってアーバンデザインのようにしっかりとした枠組みやルールの提案もしていないし、クライアントがいるわけでもない。今回の講評会でゲストの人たちが困っていたのは、その辺りの曖昧さにあったようで、評価の方向性が定めにくかったようです。ただ僕が思うのは、この中途半端さというのはスタンスとしてとても重要で、ここからアーバンデザインとしても、建築のデザインとしても発展させられるような、場のポテンシャルのようなものを提示しているんだと思っています。僕が日本で強く感じていたのは建築と都市計画の隔たりだったので、その境界を渡り歩けるような仕事に巡り会えればと考えていましたし、その意味では、この中途半端さというのは自分のなかで可能性をもった課題として持っておきたいと思っています。
最終プレゼンも終わったので、これから次の身の振り方を考えます。

エチオピア4日目:Social Architect


(画像左:ストリートチルドレン 右:Fei&FG)
午前6時。Feiと共にホテル近くのスラムエリアへ。このあたりには多くのストリートチルドレンがいて、分離帯のところに毛布一枚で眠っている。僕たちが話しかけると周囲から集まって来た。彼らは英語を話せない(公用語であるアムハラ語を読み書きできるかも怪しい)ので、英語が使えるFGを紹介してもらう。FGは道ばたの壁際にシェルターを作り、そこで生活している。

(画像左:道端のシェルター 右:その住人Mekonen)
彼もFGのようにコルゲートの金属板でつくったシェルターに生活している。FGは一応タイヤ修理の職をもっているが、Mekonenは職がない。時々物資を運ぶ仕事を任されることがあるらしいが、その相場は安く、一回1.5Birr(約20円)。アディスでもほんの一握りのお金である。彼は17歳のときから9年間こうやって過ごしているらしい。彼は読み書きもできるのに、職が見つからないというのは、どうやら人種差別的なものらしい。

(画像左:お金を分け与えるFG 右:教会の前)
FGが教会に行くというのでついていった。教会の前にはたくさんの人たちが並んでいる。FGはもっていた1Birrをコインに交換し、並んでいる人たちに分け与えている。彼も決して多くのお金を持っているわけではないが、少しでもいい生活をしている人が貧しい人に寄付することは当たり前のことだと、彼は話してくれた。教会には毎朝多くの人たちが訪れ、お祈りをしている。アディスでは教会が今でも大きな力を持っていて、人々の考え方にも影響している。政治的にも経済的にも、保守的な部分が強いのは宗教が関係しているようだ。

(画像左:川沿いに張り出している住宅 右:洗濯場)
アディスの川は決して美しいものではないが、興味深い状況をみることができる。まずは住居。アディスの川沿いは洪水の危険性や汚染防止のために住居をつくれない地帯に指定されているわけだが、貧困な生活をしている人たちがそこに住居をつくっている。そしてアディスの中心部でさえも川で洗濯していたり、トイレ代わりに使われたりしている。その結果、川沿いはマスタープランに描かれている緑化された公共空間とは全く異なり、汚染された無法地帯となっているのが現状である。

(画像:計画敷地)
他のメンバーと合流し、計画敷地であるディベロッパー所有地見学へ。周囲では新しい住宅建設が進んでいるなか、このオープンスペースは魅力的に感じられる。敷地の北側にあたる画像左側には新しい主要道路が建設されていて、住宅だけでなく店舗や公共空間としての機能も必要となってくる。

(画像:コンクリートブロック)
敷地内は現在建設資材を生産するために使われている。画像はここで作られているコンクリートブロック。お判りのとおりかなり質が悪い。まあ、日本みたいに地震があるわけではないから大丈夫なのかもしれないが。

(画像:ディベロッパーの住宅地)
同じディベロッパーが開発した住宅地へ。市の東端に位置している巨大な住宅地。(詳しくはこちら。)住宅は外観は基本的にレンガ積みのようなパネルでできていて、いかにもという印象。面白いのはほとんどの住宅の屋根に貯水タンクがついていて、白や黒の物体が浮かんでいるように見えること。どうやら住宅地への水の供給がまだうまくないらしく、タンクを使っているのだとか。なぜこんな巨大な住宅地をあえて端っこに持って来たのか。。。これをきっかけにインフラを整備して開発を促進するということなのだろうか。

エチオピア3日目:メルカート


(写真左:プレゼン前の打ち合わせ 右:睡眠不足のDarius)
本日はBuilding Collegeで残り2チームのプレゼンテーション。前日がよい感触だっただけに気合いを入れていったものの、ジュリーメンバーがちょっと遅れているらしい。前日は遅くまで踊りにいってたメンバーが多く、ちょっとグッタリした空気もあり。僕は初日からすでにカゼ気味でした。。。

(画像左:鋭い視線を送るOliver氏 右:奮闘中のFei&Girls)
今回のプレゼンテーションには前日からの教授陣に加え、Prof. Oliver氏, 主任のアブラハム氏、そして市の建築部門から参加してもらいました。東アフリカで一番の大きさを誇る市場・メルカートについての議論では、彼らもメルカートの構造を把握しきれていないようだ。博士論文でも明快になっていないらしい。おもしろいテーマであるのは間違いないが、現地の人とは違った切り口が不可欠だ。最後にOliver氏がプロジェクト全体をひとつとして捉えられる視点を提示してくれたのがとても有意義だった。

(画像左:航空写真メルカート 右:メルカートの人々)
昼食後、東ヨーロッパ最大のマーケット・メルカートへ。Google Earthでチェックした時は上の画像みたいに奇麗なグリッドになっていたので、市場の近くにスラムか何かが作られているんだと思ってたのですが、いざ来てみると、その全てがマーケットであることに気付かされたわけです。まさに巨大なマーケットで、欲しいものは全て(しかも安く)手に入るらしいです。

(画像:メルカートの人、人、人)
ガイドしてくれた学生はいくつかのゾーンに分かれていると説明してくれたが、あまりの人の多さと、同じような店舗の連続のために、その構造を把握する事は非常に難しい。しかも見えているのは表層部分のみで、奥に住居があるのか、作業場なのか、はたまた地下に保管スペースがあるとか、その実態は謎のまま。ただ、その規模と組織はしっかりとしたルールの中に成り立っているように感じられた。

(画像:メルカートに埋もれるメンバー。)
僕たちも警戒して少人数のグループに分かれたものの、メルカートを歩いているともちろん目立ってしょうがない。おもしろいことは僕が通りかかるとほぼ全員が”China!”と声をかけてくること。中国の影響の大きさを実感した。新しい道路の8割は中国からの技術によって建設されているらしいし、メルカートの商品の多くも中国から輸入されてくるらしい。

(画像左:ペットボトルのリサイクル 右:金属のリサイクル)
メルカートは巨大なマーケットとして海外ともネットワークをもっているだけでなく、アディスやエチオピアにとっても重要な役割を果たしている。その一つはリサイクル部門。市内のリサイクル可能なものはここに集められ、加工され、商品として並べられる。欲しいものは何でも手に入る場所であると同時に、全てのものを受け入れられる場所でもあるわけだ。無職者がガラクタを集めてお金を稼ぐ事が可能なのも、全てはメルカートが万能なマーケットとして機能しているためだ。ここにいるほとんどの人はここに住んでいるわけではなく、毎日通って来ている人たちらしい。オーナーはアメリカにいるのだとか。この空間を解明することは難しいが、ここから学べる事はきっと多いはずだ。

(画像左:バスターミナル 右:新しいショッピングモール)
メルカートのように人が集まるところにはインフラや投資も集まっていて、バスターミナルもあれば、新しい建物も頻繁に見られる。メルカートの特徴は高密度の状態で水平方向に拡大していくことで、地元のアーバンデザイナーたちは高層の計画案も検討している。しかし、消費活動がグラウンドレベルに集中しているため、高層のモールはそのアクティビティの獲得のために苦労していらしい。確かに雰囲気や人の入り方もかなり違う。
メルカートは単に市場としてではなく、むしろ重要な都市機能として考えられるべきだろう。