LISBON, CASAGRANTURISMO


友人のRicardoに誘われ、LISBONに行ってきました。主な目的は2つ。LISBON ARCHITECTURE TRIENNALE 2007とRicardoがプロジェクトマネージャーを務めるcasagranturismoのプレゼンテーションに参加すること。ZurichからBaselを経由してLisbonに到着すると、そこは真夏、気温37度。Zurichが雨続きで気温15度くらいだったので、春から夏に飛んで来たような感じ。そしてLisbonの街は本当に美しかった。オレンジ色の屋根とポルトガルタイルが彩る町並みは正に感動的。ただ旧市街だけがそうなのではなくて、新しい部分にもちゃんと意識が行き届いているように思えたし、すぐそこに人々の生活も見る事ができて、すぐに惚れ込んでしまいました。

LISBON ARCHITECTURE TRIENNALEのメイン会場であるパビリオンへ。Alvaro Siza設計のパビリオンの大屋根はとても印象的。屋根下の空間もとても居心地がよかった。トリエンナーレの展示作品はテーマのUrban Voidに対するアプローチが明確でないものが多く、少し物足りない印象を受けました。その点、五十嵐太郎氏がキュレーターを務めた日本のスペースはしっかりとしたテーマをもっていて、非常に興味深い内容でしたが、どうもアカデミック感が強すぎるような気がしました。テーマが違うので比べるのは難しいですが、個人的にはVenice Biennaleの藤森さんみたいに建築としての力強さも表現してほしいと感じました。

CASAGRANTURISMOのプレス発表でLisbonのCentro Cultural de Belemへ。さすがにいつもラフな格好のRicardoもプロフェッショナルの顔をしてました。若干28歳にして海外から建築家を招待してプロジェクトを実現させてるなんて、自分にとってもかなり刺激になりますね。今回来ていた建築家は、Gonçalo Byrne, BowWow, Njiric, Randic, Dekleva&Gregoric, Feld72, No45, PVeなど、各地で活躍している若手の建築家。それぞれの建築家がテーマであるTourismからデザインのアイデアを生み出していたのがおもしろい。プロジェクト自体が単なるハウジングのプロジェクトではなくTourismというテーマを持っていて、アイデアのシンクタンクとしても機能しているところはさすが。

次の日はプロジェクトの敷地であるポルトガル南部に位置するSilvesへ移動。市民へのレクチャーとプロジェクトのプレゼンテーション。Atelier Bow-WowはRicardoから午前中にレクチャーを依頼されて、午後にはまるで前から準備してたかのように上海やガエハウスをプレゼンテーションしてしまうあたり、さすが百戦錬磨というか、作品のアイデアを共有できる段階(アイデア自体、プレゼンテーション共に)にまで持って行っていることに凄みを感じた。他の建築家も同様に、デザインの見せ方を知っているし、説得力を持っている。このプロセスは今の時代の建築家として不可欠な要素だと思う。
次の日のマスタープランと個々のデザインのディスカッションも含めて、ほぼ3日間まるまる建築家の皆さんと帯同できて、いろいろな話を聞く事ができたし、Urban designやLandscape designの実践をみる事もできたので、ホントにRicardoに感謝。28歳になる頃には自分もバリバリやれるようになっていたいですね。

残った時間で、リスボン近郊のAIRES MATEUSの建築を見たり、CASCAISに行ったり、建築学生らしいマニアックな旅も忘れず。CASAGRANTURISMOのプロジェクトが完成したら、今回行けなかったPortoも含めて、また見に来たいですね。

URBAN PROTOTYPING


大学のほうも一段落したということで、Sebastianとウィーンに行ってきました。今回のお目当てはUniversity of Applied Arts Vienna主催のイベント「Urban Prototyping Conference」(公式サイトはこちら)。参加した建築家も若手が揃っていて最近の動向が知りたかったし、1988年の”Deconstructivist Architecture”のキュレーター、Vollume Magazineの創始者として知られるMarc Wigley氏の講演が聞けるということで即決しました。
印象に残ったのはBIGのプロジェクト。投資の力を意識したデザインと、メディアを駆使した戦略が若手建築家の勢いを感じさせてくれました。今年からUCLAのChairをもった阿部仁史氏のプレゼンテーションは全く建築作品は紹介されませんでしたが、むしろUrban Protyping として議論されるべき内容だったと思います。東京のマンガ喫茶やカプセルホテル、コンビニなど、都市が住居の一部になっている現象を非常にうまく説明されていました。隣で聞いていたSebastianは「お前らは狂ってる!!」って言ってましたが。。。
Mark Wigley氏はその建築家たちのプレゼンテーションを総括した内容。PROTOTYPEは同じようなものを量産する際に用いられるものだったが、違いをつくるものとして存在していると主張していました。なるほど、日本でも建築計画はある建築の標準形、いわゆるプロトタイプをつくる学問として存在していたわけですが、現在は異なる条件でのケーススタディを集積・分析する学問となっているのもそれに近い気がしました。プロトタイプはデザインの裾野を広げるものとして蓄積することには意味がありそうな気がしました。

同時に展示もスタートしたらしく、同大学の作品を見学。形態操作がやはり独特です。ETHのスイスボックス一色とはまるで正反対に見えますね。

TUWienで木質構造デザインの授業をもっておられる網野先生とも1年ぶりにお会いしました。ちょうど担当されているコースの講評会をやっていて、運良く学生たちの作品もみる事が出来ました。

最終日はちょっと遠出をしてスロバキアの首都Bratislavaへ。遠出といってもウィーンから1時間。1993年にチェコスロバキアから独立し、首都となったBratislavaはドナウ川が流れる人口40万人ほどの中都市。天気もよく、ぼーっと過ごすには最高でした。街の中を歩いてみると、奇妙な形の建物を発見。メタボリズムかと思ったら建てられたのが1926年ということで、ロシア構成主義に近いのかもしれない。でもどうしてもこの形態を支持する気にはなれなかった。ちょっと文脈が知りたい。
奇妙だったのはそれだけじゃなくて、街に人がいないこと。道路は広いのに、クルマがない。広い公園があるのに、人がいない。日曜だからっていうのを考慮しても、街の中心部で人がいるのが旧市街だけっていうのは本当に気持ち悪かった。その後川沿いに戻って人々も見られるようになったが、その空虚感が不思議だった。

Ulm: 要塞都市の現在


(画像左:大聖堂外観 中:同内観 右:頂上付近の構造)
Geislingenからハジメ君とともにUlmへ。UlmはStuttgartから南東へ70km程度いったところ。ちなみにAlbert Einsteinが生まれたところとしても知られている。
早速Ulmの大聖堂の塔に登る。高さ161mは教会として世界最高のらしい。大聖堂に登るといつも思うけど、よくもまあこんな高いところまで積み上げるものです。高さへの憧れは今も変わっていないような気がするけど、そんな人間の欲望のために、命を懸けてつくりあげる職人の情熱というやつは本当に素晴らしいと思う。

(画像左:街を流れるドナウ川 右:大聖堂に登って記念写真。)
Ulmは中世に交通の主要都市として栄えたかつての要塞都市。ドナウ川沿いには要壁のあとを見る事ができる。現在はオープンスペースとして利用されていて、市民にとっても観光客にとっても魅力的な場所になっている。街の中に巡らされている用水路と古くからの特徴的な建物を活かした街のデザインは十分に街の魅力を引き出していて、とても居心地がいい。街の中心部である大聖堂周辺では、新しい現代建築が建設されている。こんな特徴的なコンテクストをもった都市に新しい建築を融合させるのはとてもやりがいのある仕事のように思う。

Stuttgart:時代を感じさせるコレクション


(画像左:Mercedes Benz Museum外観 右:表面の仕上げ)
Easterは新潟時代の友人のハジメ君を訪ねてStuttgart方面へ。彼が住んでいるところはZurichから4時間ほど、StuttgartとUlmの間にあるGeislingenという街。ちょうど聖金曜日だったので大聖堂でBachのJOHANNES-PASSIONを聴く。ソロ部分ではたった一人の歌声なのに大聖堂の空間を通して振動が伝わってきて感激した。
Stuttgartへ。久しぶりに大きな都市に来た感覚。スイスの小ささを実感する。早速Mercedes Benz Museumへ。車体を思わせる曲線のボリュームが存在感を示している。中央に吹き抜けとエレベーターシャフトを配置し、展示空間はちょうど3つ葉のクローバーのように配置されて、少しずつ高さを変化させている。動線は時代を追っていくメインの2つの葉っぱとテーマごとのコレクションが別れていて、経験としてはコレクションの区切りにコラムが挟まれている作品集を見ている感じ。UNStudioによる作品紹介はこちら

展示自体はとてもカッコイイ。技術を高めながらデザインを洗練させていく技術革新も素晴らしいが、2つの世界大戦の中で苦難を乗り越えながら第一線のクルマを開発・提供し続ける姿勢には感激した。自分の中では300SLcoupeが1955年に開発されていることに一番驚いた。しかもそのデザインは決して古さを感じさせないところが素晴らしい。Stuttgartの歴史はMercedesとともに歩んで来ていると考えれば、Mercedesは市民にとっての誇りなのだろう。

Stuttgart郊外に位置するWEISSHOFSIEDLUNGへ。1927年にドイツ工作連盟によって開催された住宅展覧会の会場。委員長だったMies van der Roheが建築家を招顎した近代住宅建築のコレクション。Le corbusier&Pierre Jeanneretによるno.14/15は現在WEISSENHOF MUSEUMとして公開されている。いくつかは失われているが、住宅展覧会の作品が80年ほど経ってもいまだに住まい続けられていることが素晴らしいと思う。建築単体としてではなく展覧会全体として、その時代を現在に伝えることはとても意味がある。Le Corbusierらの作品はとてもコンパクトでありながら、すでに空間を変化させる仕組みを持ち、とても巧く空間を操作している。その深い考え方はやはり古さを感じさせない。

Stuttgard の中央広場の近くにあるパッサージュはとても印象的な空間。反外部的な空間として利用され、非常に効果的な空間のように思う。近くにこの発展形が見られた。画像左はコートヤードを局面のガラスで覆っている。雨の処理等に疑問をもったが、空間としては気持ち良さそう。広場の近くの新しいモール(画像右)も発展形だと思うが、表参道ヒルズやイオンモールに非常に似ている印象を受ける。ここまでくると半外部的な感覚が薄くなるからパッサージュというよりはコミュニティスペースに近い。屋外の雰囲気から比べてもどこか閉じた印象を与えている。パッサージュの進化を見てみるとおもしろいかもしれない。
memo
“Mercedes-Benz Museum”
Architect: UN studio, 2006
Address: Mercedesstrasse 100, 70372 Stuttgart
“WEISSENHOFMUSEUM IM HAUS LE CORBUSIER”
Architect: Le Corbusier & Pierre Jeanneret, 1927
Address: Rathenaustrasse 1, 70191 Stuttgart

年末のParis


 年末、思い立ってパリへ行ってきました。まあ、思い立ってパリに行けるところもスイスの立地の良さであるわけでして(しかも片道8000円くらい)。今やっている高齢者のプロジェクトでLandscapeやTopographyというものと建築をどうやってシンプルにデザインするかっていうのを考えていたので、ちょっとネタを探しに行こうと考えたのです。
 まず、Dominique Perraultのパリ国立国会図書館。対岸のBercy公園との間に2006年7月に開通したシモーヌ・ド・ボーヴォワール橋ができたことによって、デッキ部分の公共性が高められた印象。閲覧室が入っている下層部分は直接外部との関係性は見られないものの、野生を思わせる切り取られた森は人工的なランドスケープとは違った魅力がある。セーヌ川に浮かぶPISCINE JOSEPHINE BAKERと呼ばれるプールも発見。セーヌ川沿いが公共空間として開発されているような印象。

 Bernard Tschumi設計のラ・ヴィレット公園。一応今回のメインディッシュだったわけですが生憎の雨だったので使われている様子はあまり見られず。コンペ案ではフォリーと呼ばれる点のグリッドとプロムナードとよばれる線のグリッドをずらすことによって起こる偶発的な状況を喚起させようとした。コンセプトとしては明快で力強い。しかし、完成した公園には懐疑的な意見が多いようです。チュミが言うような偶発的なイベントが起こりえないことと、ランドスケープ自体としての魅力が感じられないこと。確かにプログラムは認識できても、全体的なランドスケープを体感できない感じはあったと思う。ただ、こういう人が訪れるための公園じゃなくて、ここに住民が住んでいるとしたら公園の使われ方が変化し、イベントが起こる可能性はあるのではないか。そこにはレイヤー構造の有効性があるように思われる。

 続いてエッフェル塔。特にランドスケープデザインというわけではないけど、あまりにかっこよかったもので。

 Jean Nouvel設計のケ・ブランリー美術館( LE MUSEE DU QUAI BRANLY)。2006年6月にオープン。アジア・アフリカ・オセアニア・南北アメリカの文明と芸術を展示するための美術館。行列のため内部には入れず。精霊たちが生き続ける場として提案されたことあって、持ち上げられた建物の下部や外部空間もデザインされている。カルティエ財団本部のように街路沿いにガラス面をたてる手法は川側からの景観をなじませる意味では有効だと思うが、カルティエほど本体との一体感が感じられないし、レイヤーも感じられないから、表面を覆うスクリーンのように見える。内部の植物が成長するともっと魅力的になるような気もする。次回は内部にも入ってみたいですね。

 5年ぶりにCentre Pompidouへ。ランドスケープ(地形?)自体はとてもシンプル。この傾斜のつけ方によって建物本体を背景とした劇場のような雰囲気をつくられたことが成功だったんでしょう。建物を境界にして場をデザインする、むずかしいけど一番の近道かと思います。
 あと、また5年ぶりにノートルダムに行ってきました。どうやら自分はああいうゴシック建築が好きみたいですね。パリでお世話になった藤作さん、ありがとうございました。

はるばる日本から


 1ヶ月遅れだけどしっかり届きましたよ、「ブリッジ・ブリッジ」!!!著者でありブリッジを世界に広めたやまだ山とちぇけらっちょの愛のこもったメッセージに包まれてました。どうもありがとう!早速完成した「ブリッジ・ブリッジ」を読んで、感動したね〜、これ。しかもめっちゃ完成度高くなってるし!やまだ編集がんばってたもんね〜。すげーよ、この1冊が持ってる力は。
 それにしても、いつもの風景にブリッジが入るだけで、どうしてこんなに、ニヤ〜ってなってしまうんだろうね〜。最近作業で疲れて帰っても寝る前にコレを読んで、ニヤけながら寝る事にしております。
 で、早速、スタジオに持って行って(ずーっとオレの席の上に置いてありますよ〜。)ギリシャ人とインド人に見せてみました・・・が、以外に反応が鈍いね〜。最初は驚いて見てくれるんだけど、それぞれのブリッジの違いとおもしろさが理解できないらしい・・・。途中からページめくるの早くなって、ブリッジしてる人ばっかり見てる気がするね。多分、周辺の状況がわからないから、「こんなとこでブリッジなんかやってんの!?」っていう驚きが鈍いんだと思います。あと、ブリッジを風景として捉えてくれてないと思います。ということで、これはきっと日本人の感性にストライクな写真集なんだと思います。
 ということで、チューリッヒおよびスイスおよびヨーロッパにお住まいの日本人の皆さん!「ブリッジ・ブリッジ」で日本人の感性を再発見してみませんか〜!?ご連絡お待ちしてまーす。
(amazon.comでチェックしたい方は、こちら
 最後にひとつだけ、アスプルンドがスイスになってしまって申し訳ないっす。無念っす。

Venice Biennale



さて、チューリッヒから鉄道で7時間。イタリア・ヴェネチアに到着。チューリッヒはすでに秋から冬になろうとしていましたが、こちらはまだ夏っていう感じです。どうですか!この青い海と青い空!5年前に来たときはサン・マルコ広場を見ただけだったので、今回はまた違ったヴェネチアを見ているようですね。街の外側は開発が進んでいて、バス&自動車が多いんだねー。船で移動している内側とは別の場所のように感じます。


今回は、現在開催中のVenice Biennaleの一部分である、The 10th International Architecture Exhibitionを見に来ました。今回のテーマは”Cities, arechitecture and society”です。世界最大の都市・東京をはじめとして、世界各国の都市の現状、問題点、そして数々のプロジェクトを見せてくれています。人口増加、経済成長が著しいインドやアフリカなどの都市と比べると、ロンドンやロサンゼルスは完成度が高い、成熟した都市のように感じるし、東京や上海はまた別で、経済成長は落ち着いて来たのに成熟に向かっていない都市のように感じました。おそらく、日本に都市をデザインする観点がないからだと思うんですが。こんなふうに各都市の多様な状況を知る機会は自分の中でこれまでなかったので、ずいぶんと考えさせられました。


もちろん、それ以外にも都市や建築に関わる、イタリア国内、世界各国のプロジェクトがたくさんあります。これは現在進行中のナポリの地下鉄プロジェクトで、多くの建築家が駅を担当しています。模型はドミニク・ペローの計画案。


こちらは我らが日本館。恥ずかしながらぜんぜん知らなかったのですが、入ってみたらそこには「藤森ワールド」が広がっていました。いきなり靴を脱がせる演出も、日本館だからなのか、藤森さんだからなのかわかりませんが、都市論、都市における建築に焦点をあてた他国のパビリオンと比べると、明らかに新鮮に思えました。


続きまして、こちらはMIT SENSEable City Laboratoryの展示。GPSを利用してリアルタイムでローマの交通機関の動き、携帯電話の利用状況をビジュアル化したものも興味深いデータに思えたし、他のプロジェクトもリアリティがありました。


こちらはBerlage Instituteのプロジェクト。多分3種類のプロジェクトがあったと思うんですが、それぞれ都市のなかでの建築のアプローチが違っていて、興味深いものでした。タケルさんたちのプロジェクトも発見しました。ちなみに、ETHからもStudio Baselのリサーチが展示されていたのですが・・・正直言いまして、いまいちでしたね・・・。もっとしっかり見せればおもしろさが理解してもらえるんだろうけど、見た目重視のところがちょっと残念。
2日間合計で10時間見て、疲れもありましたが、勉強になりました。ヴェネチア観光も少しできたし、ユースホステルでも楽しめて、なかなか充実した旅となりました。